前骨間神経麻痺 臨床的基本事項
前骨間神経麻痺は、正中神経の分枝である前骨間神経(anterior interosseous nerve: AIN)の障害により引き起こされる単一末梢神経障害です。
AINは純粋な運動枝なので感覚神経障害は伴わず、AINの支配する筋肉の障害により引き起こされます。
前腕骨折による外傷性のAIN麻痺の他、特発性のAIN麻痺が報告されています。ただし、後者の頻度は稀です。
AIN麻痺の診断には、神経診察が重要です。
長母指屈筋と示指の深指屈筋の障害により、母指指節間関節と示指遠位指節間関節の屈曲障害を反映した涙の雫徴候(teardrop sign)を認めます。
方形回内筋の障害により、肘を屈曲した状態で、前腕を内転させることができなくなります。
特発性AIN麻痺は片側性だけではなく、両側性に障害される場合があります。
特発性AIN麻痺の治療に明確なコンセンサスはないと思います。
神経痛性筋萎縮症との関連が報告されており、AINの"くびれ"が術中所見や超音波検査で認められたという報告があります。
参考文献
- 新 神経・筋疾患の電気診断学 筋電図・神経伝導検査 原理と実際 著:木村淳 訳:栢森良二 西村書店