前骨間神経麻痺 症候
前骨間神経(anterior interosseous nerve: AIN)は円回内筋支配より遠位部での正中神経の分枝です。
AINが障害される病態を、前骨間神経麻痺または前骨間神経症候群(Kiloh and Nevin症候群)といい、前腕骨折の合併症または特発性に生じる単一末梢神経障害です。
AINは純粋な運動神経であり、その支配筋と特徴的な所見(涙の雫徴候; teardrop sign)を理解する必要があります。
障害される筋肉:長母指屈筋(flexor pollicis longus muscle: FPL)、深指屈筋(示指・中指 flexor digitorum profundus muscles: FDP)、方形回内筋
FPLの障害が母指の指節間関節(IP)、FDPの障害が示指の遠位指節間関節(DIP)の、二つの屈曲障害を引き起こす結果、母指と示指で丸(オカネサイン)をきれいに作ることができず、涙の形になります(涙の雫徴候; teardrop sign)。
障害されない筋肉:近位では円回内筋、橈側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋 遠位では短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋、第1・2虫様筋
参考文献:
- 脊椎脊髄・神経筋の神経症候学の基本 手の症候 川上治・安藤哲郎 三輪書店